はじめに
この記事では、私が実際にペトラ遺跡を歩いて感じた「想像以上に過酷だった現実」と、行く前に知っておきたかった注意点を正直に書いています。
一方で、
・どこまで行くかの判断
・修道院に行く/行かない線引き
・体力や日程別の考え方
といった「最終的な判断基準」は、別で整理しています。
この記事は、その判断をする前の材料として読んでもらえたら嬉しいです。
ペトラ遺跡は「歩くだけ」の観光地ではない
ペトラ遺跡を訪れる前、私は完全に甘く見ていました。「世界遺産だし、観光地として整備されてるんでしょ?」――そう思っていた自分を、今なら全力で止めに行きたいです。
ペトラは、想像の何倍も過酷な場所でした。
距離
ペトラ遺跡の入口から有名な「エル・ハズネ(宝物殿)」までは約2km。「なんだ、2kmか」と思ったあなた、それは大きな間違いです。

エル・ハズネはペトラのほんの入口に過ぎません。そこから先、修道院(エド・ディル)まで行くとなると、片道だけで約4km。つまり往復で8km以上歩くことになります。
しかも、これは最短ルートでの話。実際には写真を撮ったり、脇道を探索したりするので、気づけば10km以上歩いていることも珍しくありません。ペトラを訪れた日、歩数は22,847歩を記録していました。「2〜3時間あれば十分」というガイドブックの記述を信じていた私は、現実に打ちのめされました。まともに見て回るなら、最低でも5〜6時間は必要です。
高低差
距離以上に厳しいのが、高低差です。
エル・ハズネまでの道は比較的平坦ですが、そこから先は容赦ない階段と坂道が続きます。特に修道院への道は、850段以上の石段が待ち構えています。私は暑さが苦手なので12月に行きましたが、それでもきつい。これが真夏の炎天下だったとしたら、地獄だったと思います。辿り着けなかったでしょう。
石段は一段一段が不揃いで、段差も大きい。日本の整備された階段とは全く違います。足を踏み外しそうになることもしばしば。
下りも油断できません。むしろ下りの方が膝にダメージが来ます。翌日、筋肉痛で悲鳴を上げました。
暑さ/体力
私が訪れたのは12月中旬。マシな時期だと思って選びましたが、朝と昼の寒暖差が激しく、朝はダウンを着て出ましたが、日中は日差しも強く、暑くてしっかり汗もかきました。
ペトラは砂漠地帯にあります。日陰はほとんどありません。岩に囲まれているので風も通らず、熱がこもります。太陽が真上から容赦なく照りつけ、地面からの照り返しも強烈です。
水分補給は必須ですが、遺跡内で売っている水は500mlで5ディナール(約1,000円)。高いと聞いていたので、事前に準備をしました。私は2リットル近く飲みました。さらに、途中で冷たい飲み物がほしくなり、売店で追加購入してしまいました。
体力に自信があった私でも、修道院から戻ってくる頃にはフラフラでした。途中で引き返している観光客を何人も見かけました。特に高齢の方や小さいお子さん連れの家族は、途中でギブアップしている姿が目立ちました。
ペトラは、ハイキングです。観光ではなく、登山に近い。これを理解していないと、確実に後悔します。
行く前に知っておきたかった現実
全部回ろうとしなくていい
ペトラに行く前、私は「せっかく来たんだから全部見なきゃ」と思っていました。ガイドブックに載っている見どころを全て制覇しようと意気込んでいました。でも、それは間違いでした。
ペトラは広すぎます。本気で全部見ようとしたら、丸一日かかります。しかも体力がもちません。無理して全部回ろうとすると、疲れ果てて後半は何も楽しめなくなります。
大切なのは「全部見ること」ではなく、「自分が本当に見たいものを、ちゃんと楽しむこと」です。
私は当初、以下の全てを見るつもりでした:
- シーク(峡谷)
- エル・ハズネ(宝物殿)
- ローマ劇場
- 王家の墓
- 修道院(エド・ディル)
- ハイ・プレイス(高台の祭壇)
結果的に、ハイ・プレイスは諦めました。修道院に行った時点で体力の8割を使い果たしていたからです。そして、それで良かったと思っています。無理して全部回っていたら、修道院での感動も半減していたはずです。
途中で引き返す判断が必要
ペトラで大切なのは、「引き返す勇気」です。
修道院への道の途中、ある地点まで来ると「もう半分以上来たし、引き返すのはもったいない」という心理が働きます。でも、体力が限界に近づいているなら、そこで引き返すべきです。
私が目撃したのは、修道院まであと少しのところで動けなくなり、ロバに乗せられて運ばれていく観光客でした。無理をした結果、せっかくのペトラが最悪の思い出になってしまったのです。
引き返すことは「負け」ではありません。賢明な判断です。
ペトラは逃げません。また来ればいいんです。体を壊してまで見る価値のあるものなんて、ありません。
実際に選んだ服装・靴
正解だったもの
トレッキングシューズ(登山靴)
最初は「スニーカーでいいかな」と思っていましたが、念のため日本から履き慣れたトレッキングシューズを持っていきました。不揃いな石段、砂地、岩場――ペトラの地面は場所によって全く違います。足首まで守ってくれる登山靴のおかげで、一度も足をひねることなく歩けました。グリップ力もあるので、下り坂でも安心でした。
速乾性のある長袖シャツ
体温調整のために、スポーツ用の薄手の長袖シャツを着ていきました。UVカット機能があり、汗をかいてもすぐ乾く素材のものです。その上に登山用のウインドブレーカーなどを重ね着しました。(朝はさらにダウンを重ねて着ていました。)
直射日光を浴び続けるペトラでは、長袖の方が体力の消耗が少ないです。日焼け防止にもなります。夏でも長袖が必須だと思います。
ロングパンツ(ストレッチ素材)
膝下までしっかり隠れるパンツを選びました。ストレッチの効いた素材なので、階段の上り下りでも動きやすかったです。
スカートやショートパンツだと、階段を上る時に視線が気になりますし、岩に足をぶつけた時に怪我をしやすいです。
帽子(つばが広いもの)
360度つばのある帽子を被っていきました。風で飛ばされないように、あご紐がついているものがベストです。
サングラス
砂漠の照り返しは想像以上に強烈です。サングラスがないと目が開けていられません。偏光レンズのものだと、さらに快適でした。
2リットルの水
500mlのペットボトル4本をバッグに入れていきました。それなりに重たかったですし、リュックもいっぱいになりましたが、多めに準備してよかったです。遺跡内で買うと高いので、ホテルで水を調達していくことをお勧めします。
小さめのリュック(10L程度)
両手が空くリュックは必須です。水、タオル、日焼け止め、スナック、カメラが入る程度の小さめサイズがおすすめです。
後悔したもの
小さすぎる日焼け止め
「1日だから」と使いかけの小さい日焼け止めを持っていきましたが、汗で流れるので何度も塗り直す必要があり、途中でなくなりました。
厚手のタオル
大判のタオルを持っていきましたが、邪魔でした。薄手の速乾タオルを2枚持っていく方が良かったです。
スマホだけ(カメラなし)
荷物を減らそうと、カメラは持たずスマホだけで撮影するつもりでしたが、後悔しました。ペトラの岩の色や質感は、スマホのカメラでは十分に表現できません。一眼レフやミラーレスカメラを持っていけば良かったと、今でも思います。
ここに書いた服装や持ち物は、あくまで「私の場合」です。体力・季節・行程によって、正解は変わります。自分に合う装備をどう考えるか、その判断の考え方も別でまとめています。
時間配分の考え方
入場時間
私の場合は、早朝入場を選びました。結果的に体力的にも精神的にも余裕があり、とても良かったと思っています。
ただ、このスケジュールが誰にとっても最適とは限りません。
体力・旅程・前日の移動状況によって、判断は変わると感じました。
早朝入場のメリット:
- 気温が低い(夏:朝は20度前後で涼しい、冬:寒いがダウンを着れば大丈夫なくらい)
- 観光客が少なく、写真が撮りやすい
- エル・ハズネに朝日が当たる瞬間を見られる
- 日中の暑さが本格化する前に、体力を使う修道院まで行ける
スケジュールの一例としては:
- 6:00〜6:30 入場
- 7:00〜7:30 エル・ハズネ到着、撮影・鑑賞
- 8:00〜10:00 修道院へ向けて出発、到着
- 10:30〜11:00 修道院を出発
- 12:00〜13:00 エル・ハズネまで戻る
- 13:00〜14:00 王家の墓などを見学
- 14:30 退場
引き返す目安
修道院まで行くかどうかは、エル・ハズネで一度立ち止まって判断することをお勧めします。
振り返ってみると、引き返す判断は「条件」よりも「自分の感覚」が一番のサインでした。景色を楽しむ余裕があるか。焦っていないか。「早く終わってほしい」と思っていないか。
こうした感覚が崩れたら、それは十分な理由になると思います。
無理しない基準
ペトラを楽しむための「無理しない基準」を、私なりに作りました。
体力的な基準:
- 休憩しても疲れが取れなければ、それ以上進まない
- 足に違和感があれば、すぐに引き返す
- 「もう少し頑張れば」と思ったら、すでに限界に近い証拠
環境的な基準:
- 気温が高くなってきたら、日陰で休憩を増やす
- 風が強い日は、高所への登山は避ける
- 曇りや雨の予報があれば、スケジュールを短縮する
大切なのは、「今の自分」を基準に判断することです。「せっかく来たから」「お金を払ったから」という理由で無理をしても、いいことは何もありません。
まとめ

ペトラで私が最も優先したのは、「感動すること」でした。
全部を見ることではなく、見たものを心から楽しむこと。写真を撮るために走り回るのではなく、その場の空気を感じること。「まだ先がある」と焦るのではなく、今いる場所に集中すること。
結果として、ペトラは私の人生で最も印象的な旅行体験の一つになりました。もし全部を駆け足で回っていたら、ただ疲れただけで終わっていたかもしれません。
全部を見ようとしないでください。完璧を求めないでください。自分の体と相談しながら、「今の自分が楽しめる範囲」でペトラと向き合ってください。そうすれば、ペトラはあなたにとっても、一生忘れられない場所になるはずです。
最後に
ここまで読んで、
・行けそうな気もする
・でも、修道院まで行くかは迷う
・自分なら、どこで見切るべきか分からない
そう感じているなら、私が実体験をもとに整理した「判断の材料」をまとめたガイドがあります。
ペトラを「頑張った思い出」ではなく、「心から良かったと思える体験」にするための判断材料として使ってもらえたら嬉しいです。

